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2010年東京友禅宣言

十八世紀末、幕府のお膝元であった江戸は人口百万を越え、大名の子女や江戸城大奥の女性達、さらに経済力を持った裕福な町民にいたるまで多くの華麗な衣装の需要があり、都市江戸は一大消費地でした。京都、加賀の二大産地で作られた品が届くのを待つに止まらず、それぞれお抱えの職人達により染めるようになったのは自然な成り行きでした。江戸時代より東京では隅田川、神田川沿いで友禅は染められています。
染物は川の水質による発色と、そこに住む人々の気質によって特色が出ます。江戸好みと言える「粋できっぷの良い」気質はそれまでの京都、加賀で作られた染物とは違う色彩、柄行の染物を作り出しました。粋を身上とする通好み、色あでやかな御殿風、さらに繊細な絵画風等、戦後、無線友禅が大量に染められた時代、美術的価値を求めた時代を経て現在まで江戸の染は受け継がれてきました。

明治維新、大震災、大戦と大きな時代の波の中で、世界中から多くの情報、文化を吸収し発信し、江戸は国際都市東京へと発展変化して行ったのです。時代の潮流は、洗練されたモダニズムと呼べる美意識をこの街に育みました。意匠や色彩に於いて、現代的な創作模様のみならず伝承模様にもそれを見る事ができます。
そして国内最大の消費地で作られた東京の染物は、膨大な要求に応えるべく染の表現が多様化して行き「地域の特性」を越え、作者それぞれの独自性が色濃いものとなって行きました。
今日、東京友禅と称されているものは真糊による本糸目友禅が多く、東京の染の作者はもち米による旧来の真糊防染法を使用し、糸目糊に抑揚のついた味わいのある染上がりを最上の物としています。友禅染めは大変に奥の深い手仕事で、全制作工程を一人の技術者が極められる道ではなく、分業化され、下絵、糸目糊、友禅、引き染、さらに刺繍、仕上げ等、数段階に及びます。
友禅染の制作者は、多くの熟練した職人達の手を通じまとめ上げ、それぞれが特徴のある東京の友禅を染め上げています。

東京友禅の核心は「土地柄」、「時代の流れ」、それを表現する「技法」と言えるでしょう。「継承され、創造する」伝統工芸の本質を失うことなく古今両極の美意識は共存しています。先人の気質と歴史を礎とし、近代都市の中で手作業の染め物を作り続けて「東京友禅」となるのです。

「2010年東京友禅宣言」は東京都染織卸商業協同組合が
東京友禅について主張する概念です。